霧箱のサイエンス(1) 霧箱をつくってみよう

霧箱ってなに?

右の写真を見てください。いったい、なんだかわかりますか?

実はこれ、「霧箱」を使って見た、放射線の飛跡の様子。真ん中の黒いのは、放射性物質を含む石。まわりの白い筋が、放射線が通った跡です。

ここで紹介する「霧箱」とは,数千万円もする電子顕微鏡で見えるものよりも、さらに10万分の1も小さい原子核の飛跡の観察ができる、とても不思議な装置です。この装置のおかげで、たくさんのノーベル賞もでました。

そう聞くと少し難しい話に思えるかもしれません。でも森式霧箱なら、つくるのも見るのも、とても簡単。さあ、まずは霧箱をつくって、自分の目で放射線を見てみましょう。

森式霧箱の作り方

STEP1 準備しよう

霧箱セット 液体窒素の代わりにドライアイスを使う場合、アルミのフィンは不要です

塩化ビニール棒の代わりにアクリル定規でもよいです

  1. パイレックスガラス容器
    ベーシックシリーズが良い。深さ8センチ、内径20センチ程度のもの。角型でも可。

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  2. 紙、またはサテンの布
    黒か紺。文房具屋や100円ショップにある。
  3. 無水エチルアルコール1級
    薬局にある。
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  4. マントル
    キャンプ用ガスランタンの芯。アウトドア用品売り場にある。メーカーによっては、放射性物質を含んでいないものもある。
  5. ラップフィルム
    サランラップ(旭化成)が最適。
  6. 発泡スチロールトレイ
    スーパーなどで食品がのっているもの。
  7. 塩化ビニール棒(塩ビ棒)、もしくはアクリル定規
    工作用品、水道関連売り場、文房具屋や100円ショップにある。
  8. アルミのフィン
    6.5×7㎝くらいが最適。ドライアイスを使う場合には不要。ドライアイスの上に直接パイレックスガラスを乗せる。
  9. 液体窒素もしくはドライアイス
    家庭で作る場合は、ドライアイス粒で代用可。タオルの上で細かく砕いて、敷き詰める。ドライアイスはスーパーなどで食品を購入したときに貰えるものでも可能。
  10. 光源
    通常の電気スタンドでもよい。

STEP2 作ってみよう

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液体窒素を用いる場合、換気を十分に行ってください。
極低温ですので、扱いにはご注意ください。

    1. ガラス容器の底に、紙またはサテンの布(α線を見るだけであれば、紙でよい)を敷く
    2. 2~3cc程度のアルコールを入れる
    3. マントルなどの放射性があるものを入れ、ラップでピッチリとふたをする
    4. 発泡スチロールトレイの中にアルミのフィンを置き、液体窒素を注いだら、フィンの上にガラス容器をのせる(ドライアイスを使う場合はアルミのフィンを置かずに、ガラス容器を直接のせる)
    5. 部屋を暗くし、霧箱の横から、できるだけ明るい光源を当てる

STEP3 観察しよう

2,3分待っていると、まわりに、白い飛跡が見え始めます。そうしたら、塩ビ棒をティッシュでこすって静電気を起こし、容器の上をなでるように動かしましょう。

しばらく観察して、放射線の飛跡が見えにくくなったときにも、ときどき塩ビ棒で静電気を起こして同じようにすると、よく見えるようになります。

エタノールや液体窒素を足しながら、飛跡の様子を観察しましょう。

Q&A (クリックで表示)

Q:どうして塩ビ棒で静電気を起こすの?

霧箱の中は、宇宙からくる放射線(=宇宙線)などによって、目に見えないイオンが常に発生しています。これらいわゆる「雑イオン」が雲を形成してしまうと、本来見たい放射線による飛跡が見えにくくなってしまいます。曇りの日に飛行機雲が見えないのと似ています。そこで、塩ビ棒をこすって発生させた静電気によって、霧箱中の雑イオンを除去しておくのです。こうして霧箱の中を青空と同じ状態にすると、見たい放射線の美しい飛跡が見えてきます。

私のイメージとしては・・、教室で生徒たちがワイワイガヤガヤ雑談をしている中で、誰かが意見を言おうとするとき、先生が手を叩いてしずかにさせるようなものかしら?


Q:アクリルの容器でも見えるの?

見ることはできます。ただし、おすすめはしません。α線が見えなくなる原因のほとんどは、容器全体の冷やし過ぎです。ガラス容器を使わずにアクリル容器を使うと、大きさにもよりますが、往々にして冷やし過ぎの状態になりやすくなります。
拡散型霧箱は内部の熱対流がなくなると過飽和層の再生が難しくなるので、容器全体を冷やさないことがもっとも大切です。しかし、この点がいままでまったく霧箱の専門書では言及されてきませんでした。その対策として、冷えにくいガラス容器に初めて着目したのが『森式霧箱』なのです。
アクリルで飛跡がきれいに見え続けるのは、ラッキーと思った方がよいでしょう(私は何度その不安定さに泣かされたことでしょう・・)。
学校の実験で使う場合、あるクラスで飛跡は見えたのに、他のクラスでは見えなかった!では使いものになりません。連続して何クラス実験をやっても飛跡が見える安定性が必要なのに、それがアクリルには望めないのです。

僕のミルク皿でもできるかなぁ・・?ミルク飲んでるときに放射線見えたら困るけど・・。
ところで過飽和層ってなーに?


放射線はどこにでもあるのよ。ミルクからだって出ているの。でも、マントルみたいな身近な放射線源を使う場合でも、実験が終わったら、容器はちゃんと洗ってね。
過飽和層って、蒸気が凝集したくってたまらない状態のことじゃないかしら?


Q:液体窒素とドライアイスだと、見え方は違う?

飛跡の見え方は変わりません。
動画では液体窒素を使っています。液体窒素は1週間以上保存可能なので、学校で何クラスもの生徒実験などを行うときには適した方法です。

Q:スーパーでもらう、小さいドライアイスでも見える?

はい、見えます。
ご家庭で手軽に実験される場合には、スーパーなどで手に入る粒状のドライアイスの上に直接パイレックスガラスを置く方法が最適でしょう。蒸発が早く、無くなるのが早いものの、家庭で実験する時間としてはちょうど良いと思います。
大きなドライアイスを買うと、使い切れずに残ってしまうと思います。

ドライアイスって、水に入れてボコボコ湯気を出して遊ぶだけのものと思ってた・・。
身近なものを使って、こんな高度な実験ができるんだね。


Q:大きなドライアイスの塊でやったら、うまく見えません。

容器の底全体にドライアイスがあたっていることで、容器全体が冷えてしまったことが原因だと思われます。冷やす面積の目安は、およそ、容器の底の半分として、なるべく側面まで冷やさないようにしてください。
霧箱の容器より大きいドライアイスのブロックで冷やしているのを時々見かけますが、それは時間とともに容器全体を冷やしてしまい、熱対流がうまく起こらず、過飽和層の再生ができなくなって、飛跡が見えにくくなってしまうので、良い方法とは言えません。

冷やせばいいってわけじゃないのね。


Q:時間がたったら、だんだん放射線が見えなくなってきました。

α線が見えなくなる原因として、容器全体の冷やし過ぎのほかに、底の部分の冷やしすぎでエタノールが凍り始めることが考えられます。
底が白くなったらエタノールが凍り始めているので、容器を机の上におくなどして温度を上げてください。数分すると、徐々に鮮明な飛跡に戻ってくるはずです。この状態はエタノールの量が少ないとなりやすく、多いとなりにくいため、エタノールの量も調整してみてください。

Q:霧箱の実験は寒い部屋ですると,飛跡がよく見えるのでしょうか。

霧箱の実験は、液体窒素やドライアイスを使う実験なので、寒い部屋でなければいけないと思っている人がいますが、それは全くの誤りです。むしろ暖かい部屋で実験をすると飛跡がよく見えるようになるのです。もちろん、暖かい部屋の方がドライアイスや液体窒素は早く無くなりますが・・。
霧箱を側面から暖かい電球等で照らしてはいけないと言う人がいますが、実はこれも誤りです。容器の冷やしすぎ対策として、側面から白熱電球で照明し、霧箱を暖めるのはとても良い方法なのです。
これらのことは、すべて容器全体を冷やさないようにして霧箱内部に熱対流を発生させるために対策として当然のことなのですが、霧箱の専門書では「霧箱で対流を作ってはいけない」と全く間違った説明をしてしまったため、多くの人がそれをそのまま信じてしまっています。わたしも、それを一時、真に受けてしまいました。
専門書の著者の社会的な肩書きに迷わされず、実験をして自分の目で現象を確かめて見ましょう。
それこそが「サイエンス」なのです。

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