アマチュア無線機を利用した電磁波の実験
~ 光が電場と磁場の振動であることをどのように伝えるか ~
佐藤 正隆
(はじめに)
光は電磁波の一種であり、電場と磁場が互いに垂直な方向に振動している横波である、ということをどのように伝えましょう。教科書の挿絵(右図参照:啓林館 高等学校 物理Ⅰ 改訂版より)を利用して口頭で説明する方法が一番手っ取り早いのですが、この様な図だけでは、生徒の方は実感の無さにポカーンと口を開けて?聞いているだけになってしまいます。そこで、光と同じ電磁波である電波やマイクロ波を利用して、今まで、主に次のような実験が行われています。
①教材として売っている電波実験機を利用する方法
電磁波の回折や屈折など様々な演示が可能ですが、マイクロ波を利用しているため波長が短く装置も小さくなるので、どうしても演示効果が減ってしまいます。また、磁場の振動の演示ができないのと、生徒へ伝える手段が音であることも今ひとつです。
②誘導コイルの火花で電磁波を発生、自作受信アンテナでネオン管を光らせる方法
メカニズムが単純明快で、また、電場の振動の様子を視覚で確認できるのでとても分かり易いの様です。ただ、電磁波が比較的弱く、ネオン管がそれほど明るく光らないのが残念な点です。(ただし、誘導コイルを改良し効率よく電磁波を出させている方もいらっしゃいます。)
③アマチュア無線機の電波を自作アンテナで受信し豆電球を光らせる方法
主に波長70cmのバンド(430MHz帯)の電波を出し、自作のダイポールアンテナで豆電球を光らせます。電場の振動の方向が明確に分かり、定常波の腹や節の位置を調べて波長を測定できます。
(注)アマチュア無線機で実験を行うには、アマチュア無線技士の資格(試験あり)と無線局免許(申請のみ)が必要です。資格は第4級で十分です。(4級でも送信出力20Wまで可能)
(紹介する内容)
今回紹介する授業展開は、③と同様にアマチュア無線機を利用します。しかし、さらに次のことを目的としています。特に3.が重要です。
1.電場だけでなく磁場の振動も示す。
2.自作の格子を使い、電波の電場面と格子の方向の為す角度により、透過と反射の 割合が変化することを示す。
3.光波の場合は格子の代わりが偏光板であることを伝え、光も電磁波であることを 示す。
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▓ アマチュア無線機を利用した電磁波の実験
佐藤正隆 様
初めまして、高校教師(慶應義塾NY学院)の森谷東平と申します。
このサイトを拝見して、私もアマチュア無線で電磁波の基礎をデモンストレーションしたいと思い、以下を揃えました。
1) Kenwood TM-742A Multiband Transceiver 144 MHz/440 MHz
2) Power Supply Regulated Pyramid 6 Amp 110 V AC to 13.8V DC
3) Nagoya YA-U-4344-5 430-440 MHz 12 sBi Yagi Antenna
以上を組み、「半波長ダイポールアンテナ」で6.3Vの豆球を光らせることを試みましたがうまくいきません。当方、アマチュア無線の機械を触るのも初めてです。
ご多忙中恐縮ですが、何かヒントをいただけないかと思いコメントを差し上げる次第です。
よろしくおねがいいたします。
慶応義塾NY学院 森谷先生
前略
サイエンスの森の佐藤と申します。(都立高校教員です。)
返信が遅くなり、大変に失礼しました。夏季休業に入り、部活動の指導や研究大会のため、サイトを確
認せず見落としておりました。何卒、ご容赦ください。
ご質問の件ですが、思い当たる点をいくつか申し上げたいと思います。参考になれば幸いです。
1送信機の不具合
送信機の終段は生きていますでしょうか。ケンウッドTM742は、その型式から想像いたしますと、当
方の送信機よりは新しいですが、20年ほど経過していると思われます。送信出力測定用のSWRメー
ターあるいはPWRメーターなどをお持ちでしたら
アンテナまたはダミーロード(50Ω)…アンテナを取り付けた状態と同じ状態になります。…を取り
付けた状態で測定してみてください。
2安定化電源の不具合
13.8V6Aという規格は、出力20Wまでは対応できると思いますが、50W出力には対応できません。私は
10Wで実験をしています。
また、電源の出力をオシロスコープなどで確認してください。直流でもリップル(波形が波打つ現象)があ
る程度あると、送信不能になる場合あります。安定化電源もまれに不具合があるようです。
3アンテナの不具合
nagoyaアンテナという会社は、現在は台湾にあるのですね。
まず心配はないと思うのですが、アンテナのインピーダンスは50Ωでしょうか。
アマチュア無線はほぼ例外なく50Ωのはずですが、TVなどは75Ωのアンテナを使用しています。ア
マチュア無線用のアンテナなら大丈夫だと思いますが。
御存じのとおり、インピーダンスが異なりますと、不整合の場所から反射波が送信機側に送られ、送信
を止めるか、大幅に送信電力がダウンしてしまうことがあります。場合によっては送信機の終段トラン
ジスタを破壊してしまうことがあります。
4同軸ケーブルの不整合
アンテナと同様に同軸ケーブルのインピーダンスも確認してください。これも50Ωでないと不整合が
起こります。見分ける方法は、同軸ケーブルに5Dとか10DなどとDという文字が書いてあります。こ
れはインピーダンスが50Ωであることを示しています。参考までに3Cや5CなどCがつくものはイン
ピーダンスが75Ωです。誤って使用すると、反射波が送信機に逆流し、保護回路が働くか、あるいは
終段を破損してしまいます。
コネクタも同様です。おそらくM型コネクタを使用されていると思いますが、
50Ωかどうか、確認をしてください。またコネクタの半田が中でショートしている可能性もありま
す。これはテスターで簡単に確認できると思います。
※インピーダンスのマッチングを詳しく調べるには、前述のSWRメーターの測定が必要です。これをア
ンテナと同軸ケーブルの間、および同軸ケーブルと送信機の間にいれて、送信したときの値をみます。
このとき値(SWR値…定在波比)が1.5以内であれば問題ないです。
以上思い当たる点を、記述してみました。ご確認ください。
無事、成功することをお祈り致します。