By   2011年1月3日

「進もうとする力」を「慣性」に置きかえる課題(力学1-2)

はじめに

無重量状態の映像を見たときには,物体に力がはたらかなくても「等速度運動をするのは慣性」によってであると言いますが,説明の場面が変わると生徒はすぐ運動する物体に力の矢印を記入し,「進もうとする力」の路線に戻ってしまいます。

そうした、生徒に対して、たとえば、鉛直上方に運動する物体を「慣性」という言葉を使い,自分で力学現象を再構成させていきます。生徒自身に慣性という言葉で,運動場面を整理させていく課題は,場面によって混乱していく生徒の思考方法を相
当整理する効果があると思います。

こう紹介するとすると、あまり面白くない内容のように思われるかもしれませんが、まったくそうではありません。この課題の優れた点を、言葉で説明するのはとても難しいので,まずはそのための設問と解説を一読されることをお勧めします。

プリントの問題より

この問題に至るまでの準備や流れがありますが,それは大まかには第三法則→第1法則と展開し,慣性をどう定着させるかという局面の教材です(その詳細は
授業展開例を参照して下さい。)

(1)①は,鉛直方向も水平方向も合力=0です。
(2)物体の合力は( 0 )なので( 慣性 )により( 等速度運動 )をし続ける。
[解説] ここは,とくに補足する必要なことはないと思います。

[解説]②から生徒に意識的に運動を考え直す必要性を感じさせます。
もし,物体に( まさつ )力が働いていないとすると,物体は( 慣性 )により( 等速度 )運動をしようとするが,( まさつ )力が働いているので,減速しながら(  右   )向きに進む。

物質本来の動き(慣性)と力が働くことによって物体がやむを得ず減速しながらも,今しばらくは右に動き続ける,という止まるまでの途中の様子を慣性で考えさせます。

まさつ力は左向きだが,進む向きは右向きという「力と進む向き」が逆向きでも,慣性という言葉で,自然に説明できることを感じさせるのが,ここのねらいです。この感覚をベースにして,今度は投げ上げの運動を慣性で説明していこうとするわ
けです。

イ.もし,物体に( 重 )力が働いていないとすると,物体は( 慣性 )により鉛直上方に( 等速度 )運動をしようとするが,重力が下向きに働いているので減速しながら鉛直上方に上がっていく。

ロ.もし物体に( 重 )力が働いていないとすると,物体は( 慣性 )により最高点で( 静止 )し続けようとするが,重力が下向きに働いているので,下向きに加速しながら落下する。

ハ. もし,物体に( 重 )力が働いていないとすると,物体は( 慣性 )により,鉛直下向きに( 等速度 )運動しようとするが,重力が働いているので,下向きに加速しながら落下していく。

進もうとする力

投げ上げの運動で,重力は下向きであるにもかかわらず上向きに進むことを「慣性」と「力」で説明できるようになるための課題を用意しています。その中のもっとも大切な問いは③のイです。

「もし、物体に重力が働いていないとすると、物体は慣性により鉛直上方に等速運動をしようとするが、物体に重力がはたらいているので減速しながら上昇運動する。」という説明の仕方を生徒ができるようになるのが、ねらいです。

「もし重力が働いていない場合」、と仮定法の文章で「力と慣性」を再構成していくのは、P∩E授業プリントで提案された、とても優れた視点です。そうしたねらいを生かすためにこに、①②③の順番で文章化させ、授業展開では問11,問12の設問を用意してみました。この課題→設問の流れで「物体が持っている力」ではなく「慣性」という言葉で物体の運動を再構成し、自分の思考の中に完成を定着させようというものです。

ここで展開している視点は、P∩Eでの研究プリント(原案を着想したのは,高橋毅氏ではないかと,推測しています。)にあり,これを生かすためにP.ヒューエットの著作も参考にして、現在の展開になりました。ここまで論点を整理できるようになるまで、私の理解の浅さもあり4,5年のあいだ試行錯誤の繰り返しでかなり時間がかかりました。この辺の改善は、生徒のミスコンセプションの理解の深さが問われるところなので、研究次第でまだ発展の余地がありそうです。

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