1.力の受け手と及ぼし手
2.ビデオ:宇宙からの帰還
3.光弾性の演示実験
1.力の受け手と及ぼし手
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扱い方
ここは、力の矢印の表記方法や静力学のおさらいを兼ねて軽く入るのが良いようです。「動こうとする力」や「進もうとする力」の考えがここで顔を出してくるとたいへんですから、できるだけそこまで深く関わらず、「受け手中心の力の表記は物体の運動予測に便利」という観点で整理するのが良いと思います。
注意
ただ、多くの教科書・参考書では、接触力の図示において、作用点を境界面に描き、力の受け手の問題に鈍感で、初学者のことを考えていない書き方のものが多々見受けられます。生徒が慣れるまでは、そういう本をできるだけ参考にしないように注意しないと、混乱させるおそれがあります。ちなみに、力の図示でよく配慮されている教科書は啓林館で、他は不徹底というところです。
失敗談
ある年に、力の矢印の書き方について、
●力の受け手に矢印の始点を置く方法
●力の及ぼし手に矢印の始点を置く方法と、受け手に始点をおく場合と2つ比較する説明から始めたことがありました。その上で受け手中心が便利、と持っていくつもりが、生徒の何割かは、及ぼし手中心にひきずられてしまい、やぶへびな結果になりました。その生徒は「自分が運動させるのだ!」という主役の感情をもってしまうからのようです。生徒のレベルによりますが、及ぼし手中心のミスコンセプションはやはり相当用心が必要と、確認した次第です。
大学との関連
かなりむかしの話ですが、材料力学などが分からなくなっている多くの工学部の学生が、この辺の問題で混乱したままであったようです。ただ、残念ながら、大学の先生は、まったくこの種の問題にこだわっていませんでした。この種の問題がトリビアルなとても小さな存在で問題にするに値しないと無視しているようでした。
高校と大学との間に深い断層があり、それが原因で学生に構造的な落ちこぼれ現象が生じていることにだんだん気づく大学が多くなったのは良い兆候です。ただ、高校の新課程物理の教科書は、こうした点に対する配慮が逆に後退し、この現象をより深刻化する可能性があるので、用意周到な関係者のサポート体制が必要になりそうです。
新課程教科書の問題点の関連サイト
http://maildbs.c.u-tokyo.ac.jp/~hyodo/Edu-Report2002/node30.html
2.ビデオ宇宙からの帰還
ストーリー性のある力学
著書:「光の探検」「力学は宇宙船に乗って」
物理という論理的な教科では、授業の中にストーリー性を持ち込むことがとても難しい。それが、1980年の後半頃、波動の性質をめぐってストーリーをつくり小冊子にまとめた「光の探検」(福島肇)という意欲的な試みがはじめてでてきました。次に物理の中でもっともストーリー性を持ち込みにくい力学の分野で「力学は宇宙船にのって」(1989年)という著書で、広井禎もその流れで提案しています。
力学教材の固定観念に大きな衝撃
当時、難解な力学教育にはこれ以上大きな改善は無理だ、という考えが次第に増えつつありました。従って、物理の入り口に力学を配置するのではなく、エネルギーや波動をおいた方がよいと言う意見がよくきかれました。また、このとき、同時に力学でそもそも運動方程式を教えることをあきらめた方が良いという意見も主張されるようになりました。こうした力学敬遠派がふえつつあるとき、もっとも論理性が高い力学分野にストーリー性を持ち込んだ広井禎の教材の提案に、私はとても新鮮な驚きを受けました。当時の力学教材の固定観念に相当に大きな衝撃を与えた傑作だったと思います。
生徒にもっと到達する目標を、山頂などが見えるような展開を
こうした状況で提案された「力学は宇宙船にのって」は、力学全体を一つのきっちりとしたストーリーの中に完結しているわけではないものの、意義はとても大きいと思います。広井氏は力学にストーリーを導入することの意義をこう述べていた、と思う。「力学という高い山を征服するためには、生徒にもっと到達する目標を与え、山頂などが見えるような展開をし、学習過程における生徒の意欲を喚起する授業を考えるべきだ。とりわけ力学と言う山は険しく高い山であるだけに、征服すれば、生徒は大きな達成感を得る反面、挫折も多くなる。いくら達成感を説いても、それは坂道を上るのに苦しんでいる生徒に励ましにはなりにくい。」
学習過程の位相
こうした,広井氏のストーリー性の意義の主張を,やや一般的に言えば,学習者に学習内容の位相を自らつかませること(学習のメタ認知)が,学習意欲を支援する上で大きな力になるということである。そういう意味では,ストーリーというのは,必ずしもきれいな物語になっている必要はなく,おおまかな学習過程の位相,学習する自分をモニターできる場所を確保するということが大切なことになります。
ストーリーに寄り添いながら授業を展開
完全なストーリー性にこだわりすぎると、それが物理にストーリー性を持ち込みにくくしてしまう可能性がある。ストーリー性の目的は、生徒の学習の位相を知らせることなのだから、ゆるいストーリー性、あるいはストーリーに寄り添った授業展開というより広い視点も必要になろう。Web力学は基本的にこうした視点に立ち、「宇宙からの帰還」のストーリーに寄り添いながら授業を展開している。
3.光弾性の演示実験
板書。プリントなし。