By   2020年5月12日

中・高校生が「重さ」と「質量」
       混乱をのりきるための対策は?


(中・高校生・一般用) 

現在、中・高校生や就活中で、クレーンなどの資格を取得するために理科を勉強中の人の多くが「kgの意味がわからない。」、「重さ、質量、重量、荷重の区別が分からない。」ことで混乱しています。

 ■その原因は、経産省から「kg」の意味が以下のように2つのルートで矛盾した「kg」の内容が公然と積極的に流されているからです。

①経産省→総務省・国土交通省など→郵便局、NHK,新聞テレビのマスコミ
     (kgの意味:質量=重さ=重量=荷重=・・・)
②経産省→文科省→小中高校大学、(文科省は経産省の格下官庁?)
     (kgの意味:「質量」、 N、kg重の意味:「力、重さ、重量」)

■ ①の使用例:
・郵便局では小荷物の重量5kg(kgを質量ではなく重量として使用)、
・NHKは以前は質量:kgでしたが現在は重さ:kgに逆行。
・朝日新聞は一面のトップ見出しがニュートリノの重さ発見。新聞のみならずテレビなど多くのマスコミも同類。
・「重さと質量」を混用する用法が計量法改正(1992年)以来、経産省のSI推進委員会の指導でだんだん増加しています。
■②の使用例:公教育では、SI単位系を導入し、科学の用語に従い「質量:kg」と「重さ、重量:N,kgw」を明確に区別しています。

■小学生は、「kg:重さ」と教え込まされますが、中学生になると早速これは誤りであると問答無用に「kg:質量」「重さ:N」に修正させられます。その後、生徒は落ち着いてよく社会の様子をみまわしてみると、そこでは小学生と同じように「kg:重さ」のようにも使っていて、またそうでない場合もあり、分けが分からなくなっていきます。

■こうしたことからよくネットの質問コーナーでみかけること。
郵便局では小荷物の「重さ、重量3kg」といっています。「重さ3kgは何ニュートンになりますか?」この質問に対してどの回答者も「重さ:Nと質量kgを区別しなさい。」、とたしなめ遁走してしまいます。この質問の背景にある問題には、まったく触れません。塾は問答無用で丸暗記するようにという方針のようです。ある中学校理科の指導解説書(先生の虎の巻)では、この問題に深入りしないようにと警告しています。多くの理系の専門家は、この矛盾を理解して居ますが、沈黙しています。経産省は何故、こんな不毛な混乱を引き起こすのでしょうか?

■現在、政府は沈黙していますが、国民が生活で使える「重さ、重量:kg重」の単位を法定計量単位(商品を売買する単位)から1992年に廃止してしまったので、いま国民が商品売買に使える「重さ」の単位は、何もありません。使えるのは、「質量」の単位だけです。しかし、「質量」の意味をほとんどの人は知りません。だから、代わりに「質量」を「重さ」と呼ばせる(擬装させる)混用政策が必要になったのではないかと思います。

■「質量」という言葉を「重さ」という言葉で置き換えても、この2つの日本語は意味が異なるのですから、さらに混乱は深まるばかりです。 そもそも国民は「質量」など理解できるわけがない、だからkgの意味は、「質量」だろうが「重さ」だろうが「重量」だろうが何でも良い。「kg」という記号さえ使ってくれればよい——-こういう日本語無視の方針が、経産省の本音のようです。(詳細は、経産省のSI単位推進委員会のサイトをご覧下さい。)

■解決策と自衛の手段
まず、こうした国民の科学リテラシー無視の横暴な混用政策は、即刻廃止するべきでしょう。その上で解決策は、商品売買で国民は、「質量:kg」と「重さ:kg重」のどちらを使っても良いようにするべきです。国民は好きな方を、あるいは理解できる方を使えばよいのです。
■市民は商品売買のさい「重さ:kg重」を用い、それに対して、工場や研究所で物理学に従って国際単位を統一的に使用したい科学者・企業人は「質量:kg」を用います。はかりに移動制限をしているので秤の目盛りは「kg重」と「kg」の2重表示が可能です。「kg」と「kg重」とはその単位の意味は全く違いますが、校正され移動制限された秤ではその2つの絶対値は同じと近似できるので、はかりにKg重のラベルも貼り、2重目盛りにすることできます。

このように「質量」と「重さ・重量」を明確に区別し、「重さ:kg重」と「質量:kg」をどちらでも使用可能とするのが、混乱を回避する理にかなった混用政策というものです。

■21世紀の宇宙時代においては、月面では重さが6分の1になり、宇宙ステーションでは物体から重さがなくなり「質量」がむきだしの状態になる様子が簡単にU-TUBEなどでみることができます。物体の重さが場所によって変化するという事実をみて小学生でも「質量と重さ」の直感的区別が理解可能になりつつあります。理科教育では、大変な進歩です。ただ、現在はまだそういう授業が積極的におこなわれていないのが残念です。

■くれぐれも混用政策にはご注意!
国民の科学リテラシーを否定する非常識な政策なのでまともに対応しないことがベストでしょう。
以下の用語の意味が21世紀の現在の常識です。
質量(物質の量):kg—-実体は原子
○重量(重さの量):N、kg重—-実体は重力、万有引力
「物理学事典」(倍風館)、「理化学事典」(岩波書店)、広辞苑、大辞林などを参照しましょう。

この2つをどう区別するか、という映像を近々バージョンアップしてサイトにアップロードの予定です。

(2021/05/25, Y.Mori 更新)

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