By   2015年10月3日

なぜ起きる、「重さ・重量・質量」の混乱(その1)

森雄兒

■1.はじめに

いま、理科を学ぶ子供達に「重さと質量」の区別がつかなくなる混乱が起きています。
以前の子供達の質問は、「重さは分かるが、質量がわからない。」というのがほとんどでしたが、最近の雑誌やWEBの相談コーナーでは、「重さと質量の区別がわからない。」という質問が増え、場合によっては「重さも質量もわからない。」というほとんど嘆きに近いものまで現れています。また、これは子供達だけではなく、技術関連の資格を取得するために理科や物理を再度学ぶ成人の受験生にも、同じ現象が起きています。仕事をしながら勉学する彼らは「何度、読み返しても質量、重さ、重量の区別がつかない」、と述べています。

この人達のほとんどは、自分の将来を考えて納得のいく勉強をしようとしている人たちです。大多数の人は混乱する「重さと質量」の区別にウンザリし丸暗記でテストをかわし、そもそも質問などしません。質問している人は、しっかり納得したいがゆえに何度もテキストを読み返し、理解不能な混乱におちいってしまった人たちです。

中学校の先生からは、「理科(物理)が生活から遊離している。」と現状に困惑する声、あるいは警告ともとれる声が聞かれるようになりました。教科書に付属する教師用の指導書には、この問題に深入りしないように、というアドバイスが述べられているものもあります。事情を熟知したとても正直なアドバイスともいえます。

いま私たちのまわりで起きている混乱は、実は「重さと重量、質量」だけではありません。さらに、「重量、重さ、体重」も含めそれらが「力」の意味なのか、「質量」の意味なのか、よくわからなくなる混乱が子供達だけでなく、実はほとんどの人に起きています。ただ、理科や物理の学習をしている人たちは、いち早くその混乱に直面するはめになっただけなのです。

さらにこうした事に加えて、わたしたちの生活に不可欠な商品売買のための「ものの重さ」の単位がなくなってしまっています。これは、1999年10月1日の(新)計量法の完全施行に伴い、私たちの生活に起きたとても大きな変化です。皆さんは、このことをご存じだったでしょうか。この変化は、マスコミも政府もほとんど報道しませんでした。

こうした理科を学ぶ子供達や社会人の受験生に起きている「重さ、重量、体重、質量」の用語の混乱、「理科が生活から遊離していく」という中学の先生からの警告、市民社会での「重さの単位の喪失」、これら一連の現象は一見ばらばらに見えますが、実はすべて一つの原因から始まっています。それは(新)計量法です。この法律が原因となり、その混乱が着々と広がっています。

次回では、(新)計量法の施行によって、なぜこうした問題が起きるのかということをシリーズで連載したいと思います。この問題は一見「理科や物理」だけの問題のようにみえますがそうではありません。ほとんどの人が混乱の影響を受ける物品の売買とその日常生活の言葉を失いかねない問題だからです。そのため、連載の内容は文系、理系にかかわりなく理解できるように説明していきたいと思います。

中・高校生の読者は、この小論を通して読むのは大変かもしれません。もしそう感じるときには(1)、(2)、(3)、(6最終回)と読んではいかがでしょうか。(4)、(5)を飛ばしても筋がよく見えると思います。もう少し、詳しく知りたくなったら(4)、(5)をあとで読むのもよいと思います。
(2015.11.16 部分修正)

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