(1)無重量状態
(2)ペットボトルの投げ上げ
(3)ゴルフボールとスポンジボール
(4)パイプの投げ上げ
(5)慣性質量・力の絶対単位
(6)慣性質量
(7)力の絶対単位
(8)運動の法則のまとめ
1.無重量実験装置を使った展開について(慣性質量と重力質量)
2.無重量状態の実験装置の作り方と実践上の注意
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1.無重量実験装置を使った展開について(慣性質量と重力質量)
(1)重力が届かないと無重量?
地球を脱出し、宇宙に行く想像から、無重量の状態の話ができるかというと、そうはいきません。
多くの生徒は、無重量状態ができるのは「宇宙空間では地球の重力が届かないから」というふうにかんがえています。スペースシャトル内などの映像を見てこうした考え方で理解しているのは、高校生のみならず、大学生の多くもそうです。
(2)地球の引力は十分届いている→無重量状態
こうしたことから、まず、どういう場合に無重量状態が発生するかの確認が必要になってきます。
宇宙からの帰還のビデオを思い出してもらい、アポロ11号で無重量状態になったのは、ロケットの噴射をやめたときであること、またこのときロケットに地球の引力は十分届いていることを確認します。
その後、・アポロ11号が周回軌道をまわるとき、・月に向かうとき、・月からの帰り、も全て無重量状態であることを確認します。
(3)重力のままに運動していると無重量状態になる
こうした、無重量状態になるシチュエーションをたどっていくと、無重量状態は、重力が届かないからではなく、十分重力が届き、それ以外の力が働かず、重力のままに運動していると無重量状態になることを確認します。
アポロ11号が月に向かうときの運動は、石を投げ上げるのと同じで、帰還するときはその石が落ちてくるときと同じであることの説明をします。それがプリントの§8の、親子の天文対話とロケットの図です。
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(4)無重量状態は、地上での投げ上げの運動、自由落下運動、放物運動でも実現
こうした説明から、無重量状態は、地上の投げ上げの運動、自由落下運動、放物運動でも実現することを説明し、その確認のために水をいれたペットボトルで確認の実験を行います。
こうした演示実験から、無重量状態は地球の至るところで実現していることを説明します。バスケットのジャンピングシュートの最中、トランポリンの空中に滞留している状態など、ちょっとの距離を飛び降りたときなど、いずれも実は、無重量状態なのです。
これらのことから、宇宙にいかなくても、短時間なら無重量状態は全員がすでに体験していることを話します。
(5)無重量状態の説明を現象論で
「重力以外の力が働かない状態で、重力のままに運動すれば、無重量状態になる」ということを、「重力と慣性力が等しいので相殺されるから」と説明すると、「ではなぜ重力と垂直抗力の釣り合いで無重量にならないのか?」と言う疑問もでてきかねません。
これはこれでとてもおもしろい授業展開になります。しかしここでの生徒の関心は別な方向に行き、テーマがずれてしまうので、なるべく無重量状態の説明を、現象論までにとどめたほうが良さそうです。
(6)ゴルフボールとスポンジボールの演示実験
ゴルフボールとスポンジボールの演示実験。
水入りペットボトルの実験で、「物体を投げ上げれば教室でも無重量状態を作り出せる」ということを確認し、ゴルフボールとスポンジボールの実験に移ります。

(7)討論の授業で慣性を生徒の中で定着
慣性の考え方は、討論の授業で定着させたいと考えています。
これまで、討論・仮説実験授業のすぐれたプランは多数研究されています。ただ、私見では、これらの提案された授業は優れた面を持つものの、この種の授業ばかりを続けるのは、いろいろな面で問題がでてくると思われます。
通常の授業環境であれば、討論をさせた方が良い授業展開の局面もあれば、講義形式で良い局面もあり、どうしても生徒実験が望ましい局面もあり、その選択は教材内容・授業目標などで様々です。
提示方法の特性と授業内容を考慮し、そのつど授業局面に適した方法を教師が選択し、授業を構成していくのがベストでしょう。
討論は、さまざまな授業技術の中の有効な一方法として位置づけるのが妥当です。
それらを考慮の上、§9の単元の「物質の動きにくさ」を考える授業は、生徒に討論させると、とても効果的なテーマだと思います。
(8)討論の壁:班にわけて少人数で話し合いを。レベルの高い論争を目指す必要はない。
今まで、討論の授業をしたことがない方や、討論させる雰囲気にクラスがなってない場合、どうすればよいか、大きな壁があります。
「優秀な生徒は討論授業が可能で、学力不振の生徒は討論ができない」とは、必ずしも言えません。その逆の場合もあるのです。
討論は、生徒みずからが口を開く必要があるため、授業に向かう気持を少しでも引き出すようにする他ありません。
ただ、はじめから全体討論をさせる自信がない場合には、まず、班にわけて少人数で話し合いをさせた方がよいです。それを班ごとに報告させ、人数の集計形式から始めてみるのが良いでしょう(わたしは、全体で討論させる自信がなかったので、この形式から入りました)。
この討論形式の授業の目的は、生徒がみずから質量や慣性などの言葉を使うことにより、イメージ構築が明確になる体験をすることです。
ですので、はたからみて、活発で立派な討論を目指すことは、必ずしも必要ではありません
テーマが良ければ、何回か班別討論をやっていくうちに、自然に班をこえて話し出す雰囲気も出来てきます。
ただ、どうしてもそういう雰囲気ができない場合もあり、そのときは「また別の機会に」と思って、さっぱりとあきらめたほうがよいでしょう。
討論形式の授業を過大評価したり、こだわりすぎるのも問題だと思います。要は、生徒の様々な状況に応じて柔軟な対応をすることです。
(9)ゴルフボールの予想と実験
この実験では,おそらく、大多数は、同時にはいると予想し、スポンジが先にはいると予想するのは圧倒的少数でしょう。
スポンジが先にはいると予想する生徒は、何をイメージしていたかということを調査してみると「木球と鉄球」の衝突や「ガラスを割る実験」を思い浮かべる生徒がとても多いです。生徒が考え方を変える転機になり易い映像なのかもしれません。
この討論で、クラスに2~3人くらいは、「スポンジ」と答える生徒が出ないと、討論はなかなかもりあがりません。
こうした演示実験が生徒自身の討論になるためには、その準備として、良質の無重量の映像をあらかじめ多数見せておかなければなりません。
この映像なしで討論をすると「参考書を読んで知っている!」「塾で聞いた!」と言う生徒以外に正解者がいなくなる場合もでてきます(そういうにがい体験をしたこともあります)。
ここが質量の授業のヤマなので、生徒の学力に応じた現象のていねいな事前の提示が必要になるのです。
この演示実験で物体から重さが無くなっても、物体から慣性・動きにくさが残ることを確認できると思います。
地上で横方向にぶつかってくるのと、そのとき受ける衝撃は、無重量状態でも同じ、と言う感覚を少しずつ育てていきたいところです。

(10)物体から重さが無くなっても物体から慣性、動きにくさがのこることの感覚をやしなう
定性的に動きにくさをとらえる→衝突点から定量的に動きにくさをとらえる
次のパイプの実験は、新しい体験をするというよりも、ゴルフボールの実験を定量的に発展させるためのものです。
左右に100gと100gのオモリを組み合わせてパイプを投げあげると、オモリはパイプの中央で衝突します。この実験は、簡単に終わらせて、100gと50gのオモリを衝突させる実験を行います。
この実験の予想は、前のスポンジとゴルフボールの実験の流れから、生徒はほとんど正解の方を予想しています。定性的な問でありながら、衝突点が1:2という定量的結果が得られるため、この衝突点から質量が2:1と対応することを確認できます。
(この衝突点が1対2のところになることが、大切ですが、投げあげ方によってはなったりならなかったりします。それは、左右の糸を同時にリリースしていないからです。膝を使い、やわらかく、フォロースルーをつくりながらリリースするとほとんど失敗がなくなります。ぜひ練習を!)
このとき、生徒に、「質量が2:1だと、動きにくさが2:1になり、移動距離は1:2になる」ことを確認します。

(11)衝突点から慣性質量を推定
慣性質量を求めます(パイプの実験のヤマです!)
このあと、未知の物体の質量を衝突点から推定する実験に移ります。パイプの実験はこれが目的になります。
生徒には、「無重量状態で未知の鉱物を採取したが、その質量が不明であった」という設定を話します。
そこで100g(既知の質量)と未知の質量(実は20g)の物体をゴムひもでつないで投げ上げ、その衝突点から未知の物体の質量を測定できないだろうか?と問います。
教室でそれを投げ上げ、実験すると、その衝突点が1:5になります。その結果から、生徒に質量を計算させます。

(12)慣性質量と重力質量の一致を確認
ほとんどの生徒が計算をします。
質量が20gと計算できたら、それが慣性質量であることを説明します。
そして、地球に帰還してから、その未知の物体を、今度は台ばかりの上にのせ、その重力質量を測定すると言い、そばの台ばかりではかります。
こうして慣性質量と重力質量とが一致することを確認します。
(13)運動の法則のまとめ
今までの実験から、以下のような説明の順序で、運動の法則に到達することができると思います。
- (ゴルフボール・スポンジボールの実験、パイプの実験)
力:一定のとき→質量と速度変化の大きさ(=加速度)は反比例→ m∝1/a - (ちょいおしの実験より)
質量:一定のとき→力と速度変化の大きさ(=加速度)は比例→ F∝a - まとめて、F∝ma
- m=1 kgのとき 1 [m/s2] の加速度を生じさせる力を1[N]として、
→運動の法則F=m・a
2.無重量状態の実験装置の作り方と実践上の注意
水入りペットボトルの投げ上げ実験
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実験の注意
水が入った、しかも水が漏れて出てくるペットボトルを投げ上げるのは不安で、投げ上げるのに覚悟がいります。さらに、スピンをかけて投げ上げてしまうと、ペットボトルが傾き、受け止めにくくなってしまいます。
投げ上げ方のコツは、手がペットボトルからはなれるときフォロースルーをつけて、やさしく手を離すことです。
ゴルフボールの投げ上げ実験
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実験の注意
ゴルフボールとスポンジボールを、上の図のように押さえて同時に手を離さなければいけません。この場合も、手がボールから離れるときにフォロースルーをつけてなめらかに離すと、失敗がほとんどありません。
パイプの投げ上げ実験
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実験の注意
パイプの中のオモリの衝突点が理論通りになるには、この場合も、手でフォロースルーをつけて投げ上げると失敗がありません。常に右と左の糸を同時に指から離れるように投げ上げるには、練習が必要です。
参考文献
1.森 雄兒「教室に無重量空間を」物理教育VOL45-5,P259-263
2.森 雄兒「教室に無重力状態を作る実験」東レ受賞作品集27回











