WEB物理 力学後半 授業コメント 

§2.(5)台車をちょんと押す実験 
   「生徒実験」の理想と現実 −− 「生徒実験」とレポート処理 −−

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○生徒実験のための準備と覚悟
「台車をちょんと押す実験」は、実践すればとてもすぐれた効果的な実験であるものの、20年間も普及して来ませんでした。生徒実験は、内容に納得がいっても、演示実験と異なり、実験の準備だけでなく、その後のレポート処理の大仕事も待っています。毎年続けうる実験メニューになるためには、実務的な準備も(覚悟も)相当に必要になります。


○生徒実験→レポートの山
この準備なしで実行すると、平均的な学力のレベルの高校生なら、たちまち読むに耐えないレポートの山を前にして教師がつぶれてしまうのが現実です。
最近の生徒の、レポートを書く能力の低下は著しいのです。さらに、中学のみならず高校でも、本格的なレポートを生徒に要求するのを、様々な教科で断念する方向へ傾斜していくのを感じています。生徒たちは、穴埋め形式のレポート(?)しか経験していないというのが現状であると、まず覚悟した方がよいでしょう。


○考えさせる授業と教師の負担
こうした現状で、物理の生徒実験だけでも多少まともに考えさせるレポートを生徒に要求するとなると、事前準備と時間的な負担をする覚悟が必要になります。


○小さな実験と本格的な実験
まず、いきなり「ちょんと押す実験」をしても無理なので、その前に簡単な生徒実験を最低1つは経験させておかなければなりません。この授業プランでは「フックの法則」がそれになります。「フックの法則」の生徒実験で、重点的にグラフの描き方の訓練をしておいたほうがよいのです(これで、折れ線グラフを描く生徒は相当減ります。座標軸・目盛りの取り方も多少分かってきます)。


○レポート作成の中間報告の場
次に「ちょんと押す実験」を実施します。その数日後に、一度レポートの作成の中間報告と議論の場を設けます。さらにその数日後をレポートの〆切日にします。
この授業プランでは「ちょんと押す実験」のあと、生徒がv−tグラフを書く時間をとるために、授業はまさつの授業を1時間するようにします。次の1時間で、まさつと、レポート作成の中間報告実験、討論の時間をとっています。


○レポートにならないデータの班も見つかる中間報告
中間報告の場では、再実験しないとレポートにならない班が必ずここで見つかります(教師一人で40人全ての班の一部始終を見ることはそもそも不可能なので、これは致し方がなく、はじめから生徒に覚悟をさせておくとよいです)。こうした段階を踏んで、レポートを提出させます。


○生徒自身の点検のためのチェックリスト
もちろん、こうした時間をとっても、レポートは目を覆いたくなるものが沢山やってきます。そこで、過年度の欠陥レポートのパターンを分析し、事前にチェックリスト作り、彼らに渡すのです(P10のプリント)。そのチェックリストを事前に渡すと、気がついて自分で直せる生徒がけっこう出てきます。直せない生徒の一群も相当残るものの、直せる生徒の割合を増やしていくしかありません。


○生徒実験のレポートでつぶされないために
こうしてあれこれと彼らにプレッシャーをかけると、つたないながらもいろいろ考えて書いたレポートは(丸うつしのレポートンも含め)増え、それを読むのがまた大変な仕事です。1通10分かけて読み添削すると、1クラス400分。7時間にもなります。明日の授業の準備、分掌の仕事、学年の仕事と考えれば完全にパンクで、これでは、2度とやらない1年限りの生徒実験になってしまいます。


○レポートを集めない人、レポートをめくらばんで返す人
だから、レポートを集めないという人の「理由」は理解はできます。しかし、生徒の頭の中をとり散らかしっぱなしで進むようで、私は共感はできません。レポートは集めるが、読まないでただハンコを無条件にで押して返す方がましかもしれませんが、これも倫理的に共感できません。返却する際、気がとがめるはずです。生徒もレポートをいずれ出さなくなるでしょう。


○短時間で返却するレポート処理の方法
そこで短時間でレポートを見て、すぐ返却する実務的方法を考えるしかないか、と言うことになります。
しかたがないので、さきの生徒向けのチェックリストと同じく、1年は我慢して、出来損ないのレポートとつきあい、それを分析しながら点検・評価をします。


○レポート分析とチェックリストの作成
すると、かれらのレポートの欠陥をいくつかのタイプにパターン化できることがわかってきます。そのデータをもとに、チェックリスト(P9のプリント)を作成し、項目をチェックした評価表を添えて返却します。問題ありの箇所には、アンダーラインはするものの、文字はできるだけ書かないようにします。文字を書くと時間がかかるのです。これで大体、1通評価して2〜3分、1クラスを2時間以内で片づけるのを目標にできます。それでも5クラスあると、10時間が必要になります。


○レポート処理のための2枚のチェックリスト
このWeb物理の授業プランでは、最低限こうしたことは可能になるように、生徒用のレポート提出時のチェックリストと、教師がレポートを評価するためのチェックリストの2通を準備しています。


○生徒実験が続くか、続かないかの分かれ道は
勤務時間が終わり、他教科の人がさっさと帰るのを尻目に、一人、準備室でレポートの山と10時間格闘するのは、なかなか大変ですが、やりとげれば、達成感はやってきます(わたしは凡庸な人間なので、自分で決断をしておきながら「やめれば良かった」など、夜の準備室でよく思いながらレポートをつけています)。
ただ、持ち時間は有限で人によりさまざまです。何より大切なのは、来年も何とかできそうだという方法のその人なりの模索ではないでしょうか。
いよいよ忙しくなったら、わたしが考えている方法は、次のような方法です。
生徒実験をしたあと、生徒に、台車に力を書き込むプリント、v―tグラフのプリントだけ書き込んでくるように指示し、授業時間に意見交換(討論までいくとベスト)させながら、授業でグラフを完成させていき、教師がまとめをする。レポートは集めない。
レポートと生徒実験とでは実験による体験を与えるほうが優先します。そのかれらの体験を教師がどう整理するかは、教師が毎年持続できる多様性な方法を模索するのが当然だろうと思います。

最近の公立高校の教師をとりまく環境が、異様なほど、授業以外の面で多忙をきわめている状況は、世間の話題には出てきにくいことです。しかし科学教育の最大の障害になっていることは確かなことでしょう。

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