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質量と重さの単位
                                                 森 雄兒



はじめに
 物理の教科書では、力の単位がニュートン一色になっています。高校生にとってはニュートンという単位は、物理の教科書以外には存在しない、孤立した単位なので、さまざまな問題が生じています。このコラムではこれに関連する「質量と重さの単位」についての報告を2回くらい?にわけてしたいと思います。今回は、NASAのスカイラブのプロジェクトでの「宇宙飛行士の質量の測定」のことを取り上げてみます。わたしの調査不足の点もあるかもしれません。これに対する皆様の積極的なご意見やアドバイスをお寄せください。

第1回:スカイラブで、宇宙飛行士の質量は、
      どう測定されたか?

1.スカイラブ(Sky Lab)について

  図1.SKYLAB の全景

 Sky Labは、人間の長期宇宙滞在に関連するさまざまな実験をすることを目的として、1973年5月25日にNASAが打ち上げた宇宙ステーションだ。スカイラブ(Sky Lab)はSky Labolatoryから名付けられた。実験室はアポロサターンV型ロケットを利用し、その直径は6.6m、長さ24.6mもあり、容量270m3 で、 60畳もの部屋に相当する巨大な実験空間だ。この実験室は1973年から1979年まで地球周回軌道にあり、医学、天体物理、地球資源探査、太陽観測、などの活動をした。残念ながら、大気との空気抵抗により徐々に軌道からはずれ、1979年7月11日に地球に落下し消滅してしまった。
 その間、宇宙飛行士の活動によってさまざまな教育のための実験映像も得られた。それをAAPTで編集し、教材用ビデオやその意図を解説したTeachers Guidのパンフレットも制作された。

              図2.SKYLAB内部の寸法

2.Sky Labでの宇宙飛行士の質量の測定方法について
ビデオ映像に宇宙飛行士が質量測定機BMMD(THE BODY MASS MEASUREMENT DEVICEの略)を使っているシーンがある(図3)。その中に「674146」という数値が表示されるシーンがある(図4)。この数値は一見すると宇宙飛行士の質量がsで67.4146sと表示されたかのようによく誤解されているようだ。この数値と画面の宇宙飛行士の体格をくらべると少なすぎるようにみえる。解説マニュアルで確認してみると、その値は質量ではなく、振動周期3回分の値であることが記載されていた。(たとえば、図6の3行目もそれに関する記述にあたる。)
 
    図3.質量測定機に乗る飛行士


     図4.質量測定機の表示部分
               
本当に飛行士の振動周期が3T=6.74146秒であるか、念のため、そのビデオの映像をコマ送りして周期を求めてみると数値がほぼ一致していた。T=2.24715秒、この周期のデータから計算で質量を求める、というのがBMMDのシステムのようである。マニュアル(図6)をみると校正データとしてunloaded chairの周期が3T0=2.70446、ともう一つの構成データ(自重+30.94lbs.、3回分の周期3.74937秒)も記載されていた(図6)。

               図5.質量測定機の構造   

その値とT=2π√m/k の式からSI単位系に換算してBMMDの自重約15.12s、と弾性定数7.394×102[N/m]を計算し求めることができる。次に、ビデオ映像に表示されてた値6.74146秒を周期に直し、T=2.24715秒から宇宙飛行士質量を計算すると、約79.45sの値が得られた。これなら、映像の宇宙飛行士をみて妥当な数値だろうと思われる。また、念のため校正データで検算してみると、対応する質量の値と一致した。


                            図6.質量測定機のデータ

 NASAは日本のようなSI単位系の優等生ではない。そのせいだろうか図6.のデータをよくながめてみると腑に落ちない数字や興味を引く記述もあることに気がつく。
 例えば、校正データの欄にが、なぜHouston Weight(lbs.)で表記されているのだろうか。また、AAPTの編集者による注だと思うが、データの下には、「Houston Weight(lbs.)が便利」である指摘とともに「教師、生徒の混乱を最小にするためにlbs Houston Weightをsの質量に変換した方がよい。」という注もあり、まるで謎のようだ。(つづく)

(補足)
実際に飛行士が測定している動画は、WEB物理、力学の後半の授業展開の質量の部分で見るか、会員欄に入りダウンロードをしてください。