1.屈折でつまずきやすい原因
生徒にとって屈折現象は、身近であるため興味・関心の高いところですが、他方よくつまずく単元でもあります。
屈折の学習では「異なった媒質を伝わる波」と「ホイヘンスの原理」という二つの重要な考え方の理解が必要になりますが、生徒はなかなか媒質を伝わる波というものがまだ整理・納得できない状態のままで「屈折」の学習を始めざるをえない。こうしたケースが多いことが屈折の理解を難しくする原因の一つと思われます。
それを解決するために、筆者は屈折に先立って「異なった媒質を伝わる波」について、基本的理解を深めるための方法をいろいろ試行錯誤してきました。
その結果、津波を教材にすることで、屈折に効果的につないでいけることがわかりました。以下でその授業展開のあらましを、紹介したいと思います。また、大津波は百年というオーダーでくりかえされる災害ですが、この教材が自然の驚異の体験を一過性のものとせず継承していくための一助になれば幸いです。
2.異なった媒質を伝わる波の現象
波がスリンキーやウェーブマシンを伝わっていくとき、速さは媒質の状態からいやおうなく決定されます。振動数はドライバーによって自由に決定されますが、波長λは決定されたvとf の大きさに応じて自動的に決まってきます。それが異なった状態の媒質中を伝わっていくとき、v=f・λの関係式を満たしながらパラメーターの何が変化し何が変化しないのか、ということを多くの生徒は整理できないでいます。
そのためには、生徒に異なった媒質をまたいで波が伝わっていくとき、次の3つの事実をしっかり観察・確認できる実験の場を提供することが大切になります。
- 「媒質の状態の変化に応じて」波の速度が速くなったり遅くなったり変化すること(注1)。
- ひとたびつくられた波の振動数は、いくら媒質の状態が変わっても、大きくなったり小さくなったりせず、一定であること。
- 振動数が一定のとき、速さvが増すと波長λは大きくなり、速さvが減少するとλが小さくなること。
生徒が屈折の学習に難しさを感じるのは、こうした①、②、③が自明の現象として受け入れる前に、ホイヘンスの原理という新しい建物を構築しなければならないからだと思われます。
3.結合した2台のウェーブマシン
図1. 2つのウェーブマシンの結合→
次にこうした①、②、③の現象を提示することが可能となる実験装置について紹介します。
ウェーブマシンは、島津理化よりシャイブ式水平すだれ波動実験器としてロッドの長さが46㎝のものがの標準として販売され、学校によく普及しています。その標準版に加え応用版として、ロッドが半分の長さの23㎝のものも販売されています。
波が伝わる速度はロッドの短いマシンは、ロッドの長い標準のものより約3倍速くなっています。このスピードの速い水平すだれ式波動実験器は、インピーダンスの実験の応用装置として販売されています。ここではそれとはまったく違う使い方ですが、媒質の変化を演示するのにとても便利です。
実験装置は、図1のように2つの装置を連結して使っています。23㎝マシンのマニュアルには二つののマシンを結合したとき生じるインピーダンスのミスマッチに関連した実験例とその解説が丁寧に述べられていますが、通常A,Bのマシンのインピーダンスのミスマッチにより境界部で部分反射が発生しないようによくテーパーすだれを挿入して使います。
ここでは波長の変化を際立たせることが目的なので、あえてダイレクトに連結し、部分反射もここではとりあげないで話を進めていきます。実際の津波は、大陸棚において海岸線の深さが少しづつ変化し、それに応じて速度も波長もすこしづつ変化していきます。
津波のシミュレーションでは速度の変化や波長の変化を強調するために、大陸棚を省略し津波が水深がおおきい洋上から、突然水深が小さい岸辺にやってくるシチエイションにして演示実験をします。そのためにマシンA・Bをダイレクトに連結します。遅い46㎝マシンの終端に反射波が生じないように消波ダンパーをとりつけます。(消波ダンパーは、図1の右上)。
媒質の状態の変化によって速度を変化させる実験装置には、連結したウェーブマシンだけでなく他にないわけではありません。深さを変えたリップルタンクを使った水波の実験、2つの線密度が異なるロープをつないだ装置、同様のバネの装置などありますが、演示効果はどれも今ひとつです。
もっとも演示効果が高く説得力があるのは速さの異なるウェーブマシン2台を連結した装置だと思います。その理由は、ウェーブマシンは、波の運動スパンが広く減衰が小さい。そのため、波の速度が小さくなるに応じて波長も小さくなること、振動数が一定であることなど定量的に確認できるからです。
この装置を使いv、f、λがどう変化するかを津波の発生から伝播の過程までストーリー性を持たせ授業でとりあげています。津波を題材にすると、v、λ、fの変化が単なるパラメーターの変化だけではなく、自然の驚異に接した被災者の切々たる体験談によって物理現象がリアリティをもった存在として、学習者に大きなインパクトを与えてくれます。以下でその授業内容の展開例の要点を紹介します。
4.波のわき出し口と長波、チリ地震津波の導入
授業では、まず池に石を投げ込んだ場合、どのように波がわき出し周囲に伝播していくか、図示しながら説明します。図2の授業プリントの中の(1)の図は一見するとなんということもない普通の現象にしか見えません。(1)の図を見ただけでは山が割れて谷が生まれ、谷がわかれて山が生まれる様子がわからないので、その様子をチョークで色分けなどして生徒に波の湧き出すプロセスを板書していくのが効果的です。
次に図2の授業プリントのように長波と深海波と対比させながら津波の導入的説明します。もちろん直接、長波を導入しても差し支えはありません。ただ、長波の特徴を深海波のうねりなどと比較しながら説明をすると長波のスケールの大きさがわかるメリットがあるのでここではそうしています。
長波の波長が数百kmにわたるものがほとんどで、そのあとチリ地震津波のドキュメンタリービデオを生徒に紹介しています。
ビデオを見た後、水深4000mにおける波の速さをV=√gDから計算させます。津波の速さは200m/sとすぐ計算できます。次にチリで発生した津波が18000㎞離れた日本に到達する所要時間を計算
させます。そのとき太平洋の平均水深を4000mと近似値を使います。計算結果は、25hとなり直前に見せたチリ地震のドキュメンタリーなどで報道している所要時間22時間30分とかなり近い値がえられます。(→ビデオを参照)

図2.授業プリント
5.津波の発生と成長
図3.海底の地盤が隆起し、
海水面も隆起し、津波が発生している→
次に、津波がどのように発生・成長していくか、という説明に入ります。地震が発生すると津波の発生現場では、多くの場合数十センチ程度海底の地盤の隆起あるいは沈降が起きます。それにともなって深さ数千mの海水が一斉に持ち上げられたり沈降することになります。これが数百㎞にもわたる海面で起きるのでただごとではなくなります。
そして海水表面に山か谷、場合によってはその双方の波が発生します。これが津波の発生の瞬間です。ちょうど池に石を投げ込んだときの波の湧き出し口が広大なスケールで発生したのと同じことです。
このことは最近多くの地震や津波のニュースや解説でよくとりあげられ、よく知られるようになったように思われます。そこから池の波の湧き出し口と同じように波が生まれ、周囲に伝播していきます。授業でとりあげている津波は、最近のものではなく、1960年5月のチリ地震津波の映像やデータを使って授業展開しています。それは、チリ地震津波の方が、津波の伝播の所要時間の計算から津波の速さを実感しやすいこともさることながら、被災者の冷静な証言によるドキュメンタリーの良質ビデオ映像、災害についての緻密な検証がなされ著作化されているからです。
6.津波の伝播
次に図4のような大陸棚を省略した断面図を描き、深海部D1の深さで発生した津波が、媒質の状態が異なる沿岸部D2の深さにおいて波はどう伝わっていくか、生徒に問いかけます(授業の板書では、λ2の波がまだ描かれていません)。深さが変化する境界面で、波の速度、波長、振動数がどう変化するかを2台連結したウェーブマシンを使い実験で確認していきます。クロスバーが短く伝播速度が速い23㎝のマシンは、津波が発生した深海部分とみなし、クロスバーが長く速度の遅い46㎝のマシンは水深が浅くなった沿岸部とみなします。

図4. 大陸棚を省略した津波のモデル
実験をしてみると、スピードの速いマシンからスピードが遅いマシンに波が伝わっていくと、波の速度がブレーキがかかったように急に遅くなることがはっきりとわかります。速度は約1/3に減少します。波長もあきらかに短くなることがみてとれます。図5のような演示実験を動画にして静止させると、波長が約3分の1の長さに変化していることを半定量的に確認することができます。

図5 結合したウェーブマシンの進行波の波長
波長λ1:λ2がおよそ3:1になっているのが読み取れる。
次に速いマシンと遅いマシンのクロスバーの先端に目印をつけ(写真の白い目印)、速いマシンからメトロノームの音にあわせて「1,2,3,--」と数えながら送り、遅いマシーンの目印振動で同じ位相に着目すると、周期が同じであることが確認できます。
津波のドキュメンタリービデオでは、おばあさん(当時は少女)が裏山へ必死に走って津波から逃げ切った話が出てきます。生徒に「少女は、津波からなぜ逃げられたのだろうか?」と生徒に問いかけをする。生徒によってはすぐ気がつく生徒もいるが、さきに計算した200m/sという深海でのとんでもない津波の速さから離れられなくなっている生徒もいて反応はさまざまです。長波の速さの計算式をこんどは水深10mになった場合で波の速さを計算してもらいます。
ここで津波に速さ10m/sという計算結果が簡単にえられるので、このことから命拾いをしたドキュメンタリーの事実をよく説明できるようになります。日本海中部地震津波では、通りすがりの人が撮影した映像の中で必死に走って避難する様子も記録されています。生徒は、こうした計算結果によって計算式が絵空事ではないことを強く実感していくことができます。
7.屈折率の概念の拡張について
こうした事実の確認のあと、数式で次のことを確認します。
深海部D1において、
v1 = f1 ・ λ1 ーーー①
(大)(一定)( 大)
沿岸部D2において、
v2 = f2 ・ λ2 ーーー②
(小)(一定) ・(小)
が成り立つ。
実験で観察したように f1 = f2 なので
両辺を ② / ①にし、
v2 / v1 = λ2 /λ1 ≒1/3 ーーー③
(f1 =f2 一定)
が成り立つ。
すなわち、③式は深海部から沿岸部への媒質の変化で速さが1/3になると波長も1/3になるが振動数は変化しない、という意味で実験によって自明のものとしてと確認できたものです。また、③式は、波が異なった媒質をまたがって時間の経過とともにどう変化していったかを事後/事前の比で示しているので、屈折率とは逆数になります。媒質の境界面に直交して波が進んできている場合で③式に事前に到達しておくと、屈折率の意味が拡張される様子が生徒から見えやすくなります。
屈折率は異なった媒質の境界面に波が斜めに進入するときの屈折の様子を操作的に定義し、媒質に直交する場合は適用範囲の外になります。それがホイヘンスの原理を通して、入射角に依存しない関係式n=λ1 /λ2 = v2 / v1ーーー④ に到達すると、屈折率は、媒質の境界面で屈折するしないにかかわらず④式が適用でき、境界面に直交する場合にも拡張可能になります。
もちろん、ほとんどの生徒はこの屈折率の意味の変化に気がつかない、と思います。まじめに授業についてきた多くの生徒が、光路差が登場するところからよく怪訝な顔をします。光が薄膜に垂直に進入してくる薄膜の干渉は、津波と同じパターンで波は屈折しないが、短くなった波長λ2をあらわすのにλ1/nのように屈折率が入り込んでくるからです。ほとんどの教科書では、生徒に明確なコメントをすることなく、屈折率をこっそり拡張しています。生徒の反応は、びっくりしてそこで思考が止まってフリーズしまったり、その反対に丸暗記して何事もないかのように通り過ぎるのを両極に、さまざまです。こうした教科書の記述は、もともとわかりやすいところでない光路差を無用に難解にしていると思います。
このような問題を③式は整理していくための鍵の役割を果たすことができます。津波の実験を観察した生徒から見ると、③式は異なった媒質を波が伝わっていくときにvが1/3に変化したときλも1/3に変化しfが一定であることを示した自明の式で、屈折率と無関係です。それがホイヘンスの原理から屈折率④式が導かれ、それが③式の逆数に等しいという出会いが生じる。これも屈折率と呼ぶという屈折率の論理的拡張に出会う局面になります。屈折率というのは、光が折れ曲がる度合いを示す現象の定義とばかり思っていたものが、媒質をまたいで伝わっていくときの波の指標の変化の意味にも屈折率が使われ拡張されていく場面に生徒は立ち会うことになるからです。
連結したウェーブマシンの実験は、異なった媒質をまたぐ波の変化の具体的イメージをつくるとことができるだけでなく、屈折の意味の論理的拡張まで数式の意味を見失わないで学習していける可能性が出てきます。
8.津波発生時の海水面の変動は船舶に衝撃を及ぼすか?(補足)

図3.津波の発生(再掲)
(1).海震の衝撃と津波発生時の衝撃
津波が発生すると、図のように数百㎞にわたり海水面が数十㎝程度、隆起または沈降することが知られています。このときその海面上を航行している船舶は海水面からウォータハンマーのような衝撃を受けないのだろうか。
地震を海上で受けた船舶は座礁したときのような激しい衝撃を受けるといわれていますが、この衝撃は津波発生時の海面変動によるものなのか、あるいは全く別な現象なのか疑問になります。こうした点は、津波の授業をするときのバックグラウンドとして非常に大切なことなので以下で少し考察を加えつつ整理をして見たいと思います。
地震によって津波が発生することを知らない人はほとんどいないと思いますが、同じ地震で海震も発生していることは、案外知られていません。海震を受けた船舶は、船体が持ち上げられ座礁したような激しい衝撃を受けることなどがよく報告されています。
しかし、海震は、Seaquakeとも呼ばれていることからもわかるように、地震動のP波が原因で、その衝撃波が海中を伝播し水中の潜水艦や海上の船舶などに衝撃を与える現象です。
地震発生に伴うP波による衝撃波とほぼ同時に津波の原因となる海水の変動も船舶に到達しているので、船舶がうける衝撃はP波だけでなく、海水の変動による衝撃はないのだろうか、ということが疑問になります。
海震は津波が起きる場合も起きない場合も発生していますが、いずれの場合においても海震に大きな変化があるというという報告はないようです。こうしたことから、海水面の変動による衝撃は観測できないか、あるいは、もしあったとしても海震より相当小さい衝撃ではないと推測されます。その衝撃はどの程度なのか、あるいは波のノイズにまぎれるようなほとんど無視できるようなものなのか。こうした点に明確に言及した資料は、わたしの見る限りでは見当たらないようです。
(2).海震の理論の流れ
(a).海水を非圧縮性の物体と見なした解析
そこで、地震が発生し、海底の地盤が変動したときに、海震はどのように衝撃を船舶に及ぼしているのを少し詳しく見てみましょう。津波の発生現場では百㎞というオーダーのエリアでほぼ一様に海水面の変動が起きているはずです。それ故、もし海震の発生パターンが確認できれば、その残りのエリアでは海水面の変動の影響だけが船舶に及ぶことになり、その状態の確認をすればよいことになります。

図6.水深と音速の関係
海震は海底の岩盤から海水へ媒質をかえて伝播していきます。このときP波は大きく速度を減少させるので、図7のように海水面と直交する方向へ屈折しながら進んでいく。海底の岩盤中の音速を大理石などの音速データで約 6,000 m/sと近似し、水深4,000 mの海水中の音速は1,525 m/s(注2)とすると、P波は海水面に垂直な方向に大きく屈折して伝播していくことがわかります。
このようなことから海震による衝撃が伝播する様子を「(海震は)震源地の真上またはそれに近い海域に限られて感じられる。」(注3)と述べられています。海岸工学、建築工学では当初、こうした考え方を背景に海震の伝播を非圧縮性の海水モデルで考え、震央から離れると海震は急激にエネルギーを減衰していくと説明していったようです。

図7.P波の屈折の様子
(b).海水を圧縮性の物体として解析

表1.海上は免震か?(浜村健治)
浜村健治氏は、そうした海震のとらえ方に対して、海震を再構成した表1を公表し、震源距離と海震深度という観点などから新しい問題提起をしている(注4)。
表1をみると、すべての海震が浮体を揺るがすような激しい衝撃を与えるわけではないことが明らかにみてとれます。そして海震の発生エリアも震央付近だけでなく、そこからかなり離れた場所でも海震は発生していることがわかります。海震の報告の中には大きさの多様性や分布だけでなく、さらに衝撃の数も単発のものから複数回にわたるものまでさまざまであることが報告されています。
従来、海震は非圧縮流体中のポテンシャル理論から震央のみに海震が発生すると説明されていましたが、この方法では震央の周辺に発生する海震の説明ができないだけでなく複数回震動する海震の現象も説明できていなかった。そのため、清川(注5)、望月(注6)らによって新たに海水に圧縮性を考慮した理論が展開された。
その結果、震央付近の海震の音圧は海底を腹、海面を節とする共振現象として複数回にわたって衝撃が発生することが説明されました。また、震央から数百㎞離れた場所においても海震が「多重散乱」によって発生すると説明されるようになりました。
(3).海水面の隆起や沈降がもたらす衝撃は?
こうした研究の成果を考慮すると、海水面が隆起や沈降する数百㎞におよぶ津波の発生現場のエリアで、震央を中心とした部分では共振による強い海震、その周辺部では多重散乱による干渉で海震が発生し、その残りの部分に衝撃のないエリアが存在していると推定されます。その残りの部分は、海震の影響がなく海水面の変動による影響のみが現れるエリアになります。そこには全く衝撃が発生していないか、あるいは船舶のエンジン音やうねりなどのノイズに紛れるほどに小さい衝撃かのいずれかと推測してよいのではないかと思われます。
海面の上昇は多くの場合数十㎝でしかもその範囲は数百㎞におよぶので、船舶の乗組員は海面変動による衝撃がなければ、そこが津波の発生現場であることを確認することは不可能です。そうしたエリアに遭遇した船舶の乗組員は、もし大地震や津波のあとで事後調査をうければ、どう答えるかというと、何も起きなかったか、あるいは小さなパルス振動を受けたなどと同一の回答をするグループが発生することになり、それが海面変動が船舶に与える実情になる、と思われます。
(4).南海大地震のデータによる検証
(a).調査概要
こうした見方に矛盾がないか、昭和21年南海大地震の日本保安部による海震調査の報告書(注7)で確認してみた。南海大地震は昭和21年潮岬南方沖合を震央として発生し、地震及び津波のため南西日本一帯に多大の被害を生じさせています。その資料の中に58の漁港の船舶の乗組員が、どのような衝撃を受けたかという海震調査記録があるので、それを集計・整理してみた。その結果は、58の漁港の船舶のなかで、49の回答が海震を感じ、11の漁港の船舶が海震を感じていなかったと回答しています。重複は2回答ありました。それぞれの漁港から出漁した一部の船舶は海震を感じ、一部の船舶は感じないかったという回答です。
(b). 海震を感じていない11のデータ
海震を感じている回答数が49/60と多いことから海面が変動した地域で操業していた漁船が多数サンプリングされている可能性が高いデータであると推測されます。こうしたことから11/60のデータの中に海水面が変動している場所で操業し、海震を感じていないという回答が複数含まれていることは、ほぼ確実とみてよいだろう。
こうしたことから、海震が及ばなかった海域での海水面の変動は操業する漁船に衝撃を与えないか、あるいは波浪やエンジン音などのノイズに紛れてしまう程度のものと推測されます。
(5).結論
海岸工学、建築工学の分野では、海震研究のメインテーマは大型タンカーや海上空港などのような大型浮体の海震に対する安全な設計です。海震について物理教育の視点とは、ややテーマ性にずれがあり、そもそもこうした海底の変動が船舶に衝撃をもたらすか、どうかなどということは、いまさら問題にするに値しないという感覚のような気もします。
そういうことから建築・海岸工学で関連的に言及されている部分と資料を駆使して無理のない範囲で推測を試みた結果、衝撃はほとんどないだろうという結論に到達した次第だ。今後は、GPSによる位置情報を加味した実証的研究、圧縮性を考慮した海面変動の理論的研究などからこの点を厳密に検証されることを期待したい。
注および引用文献
(注1)生徒はすばやく媒質を振動させると、波はすばやく進んでいくとよく考えてしまう。この考え方は、媒質が波の速さを決定するということを考慮していないミスコンセプションとみることもできるが、他方振動数によって速さが変化する光の分散を考えればあながち間違いでもない。その点は光の分散まで授業展開上の教育的保留事項とすべきと思われます。
(注2) 水深4,000 mの海水中の音速は、水圧、温度、塩分濃度を考慮したDel Grossoの計算式によって水温2℃で1,525 m/sと算出されたものを利用しました。この音速の詳しい計算式の説明は下記のホームページを参照してください。http://resource.npl.co.uk/acoustics/techguides/soundseawater/content.html#DEL
(注3)「海洋の事典」(1960)東京堂
http://www.mirc.jha.jp/knowledge/encyclopedia/index.html 永田財団法人日本水路協会 海洋情報研究センター
(注4)浜村健治(1987):海上は免震か?ー海震の調査ー船の科学、Vol.40,pp58~61
(注5)清水哲志他(1989):Seaquakeの発生のメカニズムについて,海岸工学論文集Vol36、pp734~738、
(注6)望月幸司他(1997):海震が沿岸浮体構造物に及ぼす影響に関する研究、関西造船協会誌Vol.227,pp.127~134
(注7)日本水路部(昭和23年3月31日)水路要報増刊号・昭和21年南海大地震報告pp31~33
授業で使っている津波のビデオ
三陸沖津波ビデオ・高解像度MPGファイルダウンロード |
大分以前に、入手しましたが必要部分だけを取り出してしまったため制作者がわからなくなりました。授業にとても有効なので大切に使わせていただいているものです。制作者の方を明らかにできず、申し訳ありません。 |



