サイエンスの森
授業が変わる実験

α線による散乱の教材化について


[第1回] ヘリウムとの散乱


[第2回] 運動量の応用




 
  [第2回] 運動量の応用


佐藤 正隆
 
はじめに

ユークセン石から出たアルファ線のヘリウム原子核によると思われる散乱の写真を何とか活かせないものかと考え、試行錯誤しながら3年生の選択物理の授業教材を作成、実践してみました。ここでは、その写真の解析と、教材の作成過程および授業を行ったときの生徒の反応などをまとめてみました。




教材づくりのための写真の解析

散乱後の原子核のうち、Aは飛跡が短く先端が細くなっていることから、十分に減速する前に過飽和層の外へ出て行ってしまったと考えられます。一方Bは、飛跡が約1cm弱と比較的長く、飛跡後半が微妙に膨らんでいるように見えるので、熱原子核になる直前?まで過飽和層内に存在し、飛跡をつくったのではないかと考えられます。(あまり自信はないのですが、そうでないと教材にしづらい…)


α粒子は、熱原子核になる直前(飛跡先端から3mm〜5mmあたり)で最も電離性が強くなる。
そのため熱原子核になるまで過飽和層に存在したα粒子の飛跡は先端が膨らむことが多い。
また、アルファ粒子は速さが十分に遅くなってから散乱されることが多く、さらに散乱後1cm弱の飛跡を残していることから、熱原子核になる直前である可能性が高いと考えられる。
(資料1参照)


これらの事に大きな誤りがなければ、Bの飛程からAの粒子や散乱直前のα粒子のエネルギーを概算することも可能です。また、概算した値からこれまでの解析に誤りがないかどうかの大まかな裏づけも取れるはずです。





授業のプリントの流れ

授業時間の効率化とこちらで授業を進める上で便利なので、生徒用のプリントを作成しました。 その際、以下のような流れで展開しました。
 @写真の解説
 A分離角の測定                               (解析1)
 B反跳原子核の質量の推定(反跳原子核の同定)           (解析2)
 C散乱角と反跳角の測定(どちらが散乱角または反跳角か不明)  (解析3)
 D飛跡の長さと運動エネルギーとの関係について説明
 E運動量保存の法則からAの粒子の運動量の大きさを推定(ベクトルの作図)
                                          (解析4)
 F10円玉を使った散乱のシミュレーション(生徒実験)
 G散乱角または反跳角の大きさと散乱後の粒子の速さとの関係
 Hまとめ(解析した結果)
 I応用問題(散乱後の飛跡から散乱直前のα粒子のエネルギーと速さの算出)

α線の散乱(運動量の応用)プリント ダウンロード


α線の散乱(運動量の応用)解答プリント ダウンロード





生徒の反応について

3年選択物理の生徒はすでに運動量の授業(同質量2次元弾性衝突)は終了しており、また2年次に霧箱の生徒実験をやっているので、導入にはなんら問題がありませんでした。2次元の衝突になることや、過飽和層が薄いために途中で飛跡が途絶えてしまうことと写真に写った飛跡の形との関連は、右写真のように上質紙を丸めて飛跡のモデルを作り、見せることで、生徒は納得できたようです。(上の薄色の部分が飛跡が途絶えたと思われる部分です。)




その後、Hのまとめまでは、多くの生徒が理解したようにみえました。最後のエネルギーと速さの計算は、理解した生徒はごく一部かも知れませんが、α粒子の飛程とエネルギーとの関係やα粒子の電離性等について実感ができたのではないかと思われます。






おわりに

最終的な結果としては、AとBのどちらが散乱核でどちらが反跳核かは判断できませんが、He4の原子核に散乱されたという事が解析の結果判明し、さらに散乱直前のα粒子のエネルギーは約3MeV、そのときのα粒子の速さは1×107m/sという結果が出ました。ほぼ妥当と思われる値が出てひと安心しました。生徒にとって、今まで勉強した事が実際に利用できるという経験はとても貴重であり、今後も物理を学んで行こうという意欲につながったのではないかと考えます。 (資料2,3参照)

参考サイト:日本原子力研究開発機構
      科学技術振興機構 研究成果展開総合データベース(J-STORE)




資料


資料1



資料2
資料3
http://jstore.jst.go.jp/patent/detail/13386.html

※いずれも日本原子力研究開発機構ホームページより

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