サイエンスの森
授業が変わる実験

α線による散乱の教材化について


[第4回] ヘリウムとの散乱


[第5回] 運動量の応用





 
  [第4回] ヘリウムとの散乱の場合


森 雄兒
 
はじめに

 かつて,さまざまな気体とα粒子の散乱の写真を撮影ていました。この(写真1)は,そのなかのヘリウム原子核との散乱の1枚です。これから,散乱映像の説明とこれを教材化する試みを2回ににわけて紹介します。1回目は撮影のいきさつと散乱映像の説明をし,2回目は授業の実践例を佐藤氏が提案します。
あああ        
写真 1.α線の散乱
写真 1.α線の散乱




α線の散乱はめずらしい現象か?

 霧箱は,「α線用の森式霧箱」を使って撮影をしました。その霧箱の詳細は,すでに発表済なので,ここでは省略をします。もし「α線用の森式霧箱」の作り方など詳細をお知りになりたい方は,サイトの中に製作方法を紹介した動画映像がありますので参考にして下さい。  
 通常,空気中でのα線の飛跡を観察していると,飛跡の終端部分によく枝毛のようなY型の飛跡が見つかります。これが空気中の酸素や窒素とα粒子が散乱している飛跡です。ただ,ほとんどの人はこれに気づかないようです。理由は,散乱のY型がとても小さくしかも先端部であること,さらにそもそも散乱現象などの発生確率が低く観察できるわけがないと決めてかかっているからではないかと思います(注)。  
 なんといっても,金箔にα線を打ち込むラザフォード散乱の固定観念が大きいのだと思います。確かに,α線が光の速さより一桁小さいあたりの速度で運動している場合は,散乱現象は,なかなかおきないと思います。しかし,α粒子の飛跡の終端部分では,その速度が急激に減速しはじめるので,散乱が飛躍的におきやすくなり,そう珍しい現象でもないのです。線源にもよりますが,見えるはずと思って霧箱を5分ほど観察してみると1,2個は見つかると思います。そのほとんどは、空気中の酸素の原子核か窒素の原子核とα粒子との散乱です。  
α線とヘリウム原子核散乱の撮影方法について

 空気中の酸素や窒素の原子核との散乱は
よく起きますが、α線とヘリウムの原子核の
散乱は滅多に起きません。
空気中に天然に存在するヘリウムガスガスがあまりに少なすぎるのと、サイズが小さいので散乱がおきにくいのです。
 そこで,霧箱の内部に人為的にヘリウムガスを注入して,撮影を行なうことになります。霧箱内部に線源のユークセン石をいれます。ユークセン石からでるα線の飛跡を見ながら過飽和層が形成されたところで,霧箱の内部にヘリウムガスを注入します。
 もちろん,たちまち過飽和層は崩壊しα線の飛跡は見えなくなります。この「森式霧箱」の特徴は,はじめて熱容量の大きい厚いガラスを使い,側面から光源の熱で暖め,熱対流によって過飽和層の再生を迅速に行えるようにすることをめざしている点です。そして,熱対流が底の薄い過飽和層の復元力となり短時間でこわれた過飽和層を再生させてしまうと言うものです。ところが,専門書では「対流が生じ安定には動作しなくなる。」と述べていたりしているために,霧箱の製作者や現場の教師に大きな誤解をもたせる原因になっています。
 ヘリウムガスを注入後,しばらく待ち,過飽和層が再生したら撮影に入ります。撮影していると,相当に霧箱の密閉に気をつかっていてもヘリウムもれを阻止するのは無理です。しかもヘリウムは軽いのですぐ霧箱の天井に集まってしまうはずです。時間とともにかんじんの過飽和層のある底の部分にはヘリウムガスは希薄になっているのではなかろうかと,推測。そのため,5分おきくらいにヘリウムガスの注入作業をくりかえしながら撮影しています。こんなことをしながら,500枚くらい撮影した中の1枚が(写真1)です。
 
写真 2.生徒掲示ポスター



 



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