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・教育と季節風 ・いま教育のすがたは? ・質量と重さの単位:第一回『スカイラブで、宇宙飛行士の質量は、どう測定されたか』

2009/9/10
森のコラム

質量と重さの単位

                                             森 雄兒
はじめに
 物理の教科書では、力の単位がニュートン一色になっています。高校生にとってはニュートンという単位は、物理の教科書以外では登場しない、孤立した単位なので、さまざまな問題が生じています。森のコラムでは、「質量と重さの単位」に関連する報告を2回くらいにわけてアップロードしたいと思います。今回は、まず身近な教材として有名なNASAのスカイラブのプロジェクトでの「宇宙飛行士の質量の測定」のことを取り上げてみます。報告に対して、皆様の積極的なご意見やアドバイスをお寄せください。(info@sciwood.comまで。)

第1回:スカイラブで、宇宙飛行士の質量は、
                どう測定されたか?

1.スカイラブ(Sky Lab)について

  図1.SKYLAB の全景

 Sky Labは、人間の長期宇宙滞在に関連するさまざまな実験をすることを目的として、1973年5月25日にNASAが打ち上げた宇宙ステーションです。実験室はアポロサターンV型ロケットを利用し、その直径は6.6m、長さ24.6mもあり、容量270m3 で、 60畳もの部屋に相当する巨大な実験空間です。この実験室は1973年から1979年まで地球周回軌道にあり、医学、天体物理、地球資源探査、太陽観測、などの活動をした。残念ながら、大気との空気抵抗により徐々に軌道からはずれ、1979年7月11日に地球に落下し消滅してしまいました。
 その間、宇宙飛行士の活動によってさまざまな教育のための実験映像も得られた。それをAAPTで編集し、教材用ビデオやその意図を解説したTeachers Guidのパンフレットも制作されました。

              図2.SKYLAB内部の寸法

2.Sky Labでの宇宙飛行士の質量の測定方法について
 図3は宇宙飛行士が質量測定機BMMD(THE BODY MASS MEASUREMENT DEVICEの略)を使っているビデオシーンです(図3)。その中に「674146」という数値が表示されるシーンがあります(図4)。この数値は一見すると宇宙飛行士の質量がsで67.4146sと表示されたかのようによく誤解されているようです。この数値と画面の宇宙飛行士の体格をくらべるとあきらかに少なすぎるようにみえます。解説マニュアルで確認してみると、その値は質量ではなく、振動周期3回分の値であることが記載されていました。(たとえば、図6の3行目もそれに関する記述。)
 
    図3.質量測定機に乗る飛行士


     図4.質量測定機の表示部分
               
 本当に飛行士の振動周期が3T=6.74146秒であるか、念のため、そのビデオの映像をコマ送りして周期を求めてみると数値がほぼ一致していました。T=2.24715秒、この周期のデータから計算で質量を求める、というのがBMMDのシステムのようです。マニュアル(図6)をみると校正データとしてunloaded chairの周期が3T0=2.70446、ともう一つの構成データ(自重+30.94lbs.、3回分の周期3.74937秒)も記載されています(図6)。

               図5.質量測定機の構造   

 その値とT=2π√m/k の式からSI単位系に換算してBMMDの自重約15.12s、と弾性定数7.394×102[N/m]を計算し求めることができます。次に、ビデオ映像に表示されてた値6.74146秒を周期に直し、T=2.24715秒から宇宙飛行士質量を計算すると、約79.45sの値が得られます。これなら、映像の宇宙飛行士をみて妥当な数値だろうと思われます。また、念のため校正データで検算してみると、対応する質量の値と一致しました。


                            図6.質量測定機のデータ

 よくいわれることですが、NASAは日本のようなSI単位系の優等生ではありません。そのせいだけではないでしょうが図6.のデータをよくながめてみると、腑に落ちない数字や興味を引く記述もあることに気がつきます。
 例えば、校正データの欄が、なぜかHouston Weight(lbs.)で表記されています。また、AAPTの編集者による注だと思いますが、データの下には、「Houston Weight(lbs.)が便利」である指摘とともに「教師、生徒の混乱を最小にするためにlbs Houston Weightを質量のsに変換した方がよい。」という興味深い注もあり、日本の現状と比べまるで謎のようだ。(つづく)

(補足)
実際に飛行士が測定している動画は、WEB物理、力学の後半の授業展開の質量の部分で見るか、会員欄に入りダウンロードをしてください。